「やっと言える、さよならが言える」唯川 恵

「私、正直にいうと惰性ってことば、あまり好きじゃないの」

「どうしてですか?」

「馴れるって、すごく嫌な感じを受けるじゃない。鈍感になる、図太くなる、そんな響きがあるわ。

でも私は、そうじゃないって思ってる。ラット(モルモット)たちは、痛みに馴れるんじゃなくて、痛みを自分の中に取り込んでしまうのよ。

克服するって言っても良いと思うわ。

それは強さじゃないかしら」

(中略)

彼女もまたもがいている。痛みを自分の中に取り込むことができない。そのやりきれなさに思いあぐねている。

「たぶん死ぬわ、そのラットは。そして痛みを克服したラットだけが生き残る。あなたはどっちかしら」

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