「赤毛のアン」より
人はみんな生涯の目的というものをもって、
それをどこまでもやりとげなくてはならないって、アラン先生が言いなすったわ。
ただその目的が、価値があるものかどうかをたしかめてからでなくてはいけないんですって。
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「もしあたしが男の子だったら、今とても役に立って、いろいろなことで、マシュウ小父さんに楽をさせてあげられたのにね」
とアンは悲しそうに言った。
「そうさな、わしには12人の男の子よりも、お前1人の方がいいよ」
とマシュウはアンの手をさすった。
「いいかい? ――12人の男の子よりいいんだからね。
そうさな、エイヴリーの奨学金をとったのは、
男の子じゃなくて女の子ではなかったかな?
女の子だったじゃないか――わしの娘じゃないか。
――わしの自慢の娘じゃないか」
(死の前日のマシュウとアンの会話)
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「あたしがクイーンを出てくる時には、
自分の未来はまっすぐにのびた道のように思えたのよ。
いつも先まで、ずっと見通せる気がしたの。
ところが今、曲がり角に来たのよ。
曲がり角を曲がった先になにがあるのかはわからないの。
でも、きっと一番よいものにちがいないと思うの。
それにはまた、それのすてきによいところがあると思うわ。
その道がどんなふうにのびているかわからないけれど、
どんな光と陰があるのか――どんな景色がひろがっているのか
――どんな新しい美しさや曲がり角や丘や谷がその先にあるのか、それはわからないの」
「アンの青春」より
「結局、一番幸福な日というのは、
すばらしいことや驚くようなこと、胸の沸きたつような出来事が
おこる日ではなくて、
真珠がひとつずつ、そっと糸からすべりおちるように、
単純な小さなよろこびを次々にもってくる1日1日のことだと思うわ」
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「まじめなことばかり言ってるのは
たいへんおばかさんな人だけなのよ」
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「自分の名前を美しいものとするような暮らしをする
たとえその名がはじめは美しくないとしても
それを耳にしたとき、人々の心に
なにか美しい快いものが浮かぶような名前にね」
「アンの愛情」より
「それが私たちが年をとるにつれて学んでいくもののひとつですよ
――人を赦すということがね。
はたちの時より40歳の時の方が楽にそうできるものですよ」
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「人生が生き甲斐あるってことは、わかっているのよね」
「アンの幸福」より
「道って面白いものじゃない?
まっすぐな道ではなく行き止まりがあったり
こんぐらかっていたりして
その向こうに美しいものや
思いがけないものが 隠れていたりする道のことよ
あたしはもとから道の曲がり角が好きなの」
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「何も書いてないページを見て
どんなことがそれに書かれるのかしらと考えるのは
すてきじゃないこと?」
「アンの村の日々」より
「人は現実には飽きることがありますけど、
夢には決して飽きませんわね」
「続アンの村の日々」あとがきより
彼女は人間社会の暗い一面だけを強調するのを好みませんでした。
むしろ人間の醜さをよく知っていたからこそ、
作品の中ではそれとは別の一面を多く描こうとしたと言えるかもしれません。
1936年にモンゴメリは、彼女の作品への批判にこたえて、
「美しい夕暮れもまた、人生の醜悪な一面と同様に真実のものであります」
と言いました。
彼女が描いたっユーモアと郷愁にあふれた世界は
読者だけでなくモンゴメリ自身にとっても
人生の絶望や不安や幻滅を忘れるための世界であり
現実生活から受ける様々な傷をいやす場所であったように思われます。
”人生は生きるに値する”
「炉辺荘のアン」より
「普通の日なんてものはないわよ。
どの日もどの日も、ほかの日にはないものを
もっているんですもの」
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だれかが自分の世話をしてくれ・・・自分を必要だと思ってくれ・・・
自分がだれかにとって大事な人だと知ることは
たいそういい気持ちだった。
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「あの角のロンバルディの上にある白い夕星をごらんなさい。
あのようなものを見るたびに、わたしは生きているのが
ただうれしくてたまらないという気になるの」
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「年をとってきますと、ときどきこの世が少しばかり退屈になることもあるのでね。
死ぬことはいくらか変化をつけてくれるでしょうよ。
わしはほんとうに死ぬってことを知りたくてしょうがないんですよ」
「アンをめぐる人々」より
悲しみというものは気位の高いものであるから。
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愛は人をたいそう謙遜にし
愛するもののためになにもかもしたくなるものだ。
「虹の谷のアン」より
「あなた方のお母さんの代わりにはなりたくないの。
――お母さんはいつまでもお母さんとして思っていなくてはなりませんよ。
そうかって私、ままははさんになるつもりはないの。
ただあなた方のお友達、何か手伝ってあげたりする、仲良しになりたいのよ。
そうだったら素敵じゃない?」
「アンの夢の家」より
あたしは人生の喜びと一緒に
悲しみもよろこんで受けますから。
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一足先にどんなことが待っているか
わかったもんじゃありません。
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ギルバート「真珠は涙をあらわすと古い伝説にあるが」
アン「そんなことは怖くないわ。
涙は悲しいものもあるけれど、幸福な涙もあるのですもの。
あたしが一番幸福な時は眼に涙が浮かんだ時だったのよ。
――マリラがあたしにグリーンゲイブルスにいていいと言った時
――マシュウがあたしに生まれて初めての美しい服をくれた時
――あなたの超チブスが回復に向かったと聞いた時。
だからあたしに真珠のエンゲージリングをちょうだい、ギルバート。
あたしは人生の喜びと一緒に悲しみもよろこんで受けますから」
「アンの娘リラ」より
「もう一度、賑やかなお祝いをしましょうよ。
みんなの席を用意しましょうね、スーザン。
戦争が始まってはじめてのクリスマスに、スーザンがしたようにね。
――そうよ、全部の席をね――永遠に空いたままのわたしの大事な息子の椅子も
ほかのみんなと同じようにね、スーザン」
「あの子の席をわたしが忘れるはずがないじゃありませんか」