その人はその人を生きるようにできている。
幸福とは、自分が実は一人だということを
なるべく感じなくていい人生だ。
どうしても、自分がいつか死ぬということを感じ続けていたい。
でないと生きている気がしない。
世界は別に私のためにあるわけじゃない。
だからいやなことがめぐってくる率は決して変わんない。自分では決められない。
だから他のことはきっぱりと、むちゃくちゃ明るくしたほうがいいって。
私は彼女の早とちりも、恋にだらしないことも、
昔は営業マンで、仕事についてゆけなかったことも、
みんな知っているけれども・・・
今の涙の美しさは、ちょっと忘れがたい。
人の心には宝石があると思わせる。
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「かぜはね」うららは少しまつ毛を伏せて淡々と言った。
「今がいちばんつらいんだよ。死ぬよりつらいかもね。
でも、これ以上のつらさは多分ないんだよ。
その人の限界は変わらないからよ。
また繰り返しかぜひいて、今と同じことがおそってくることはあるかもしんないけど、
本人さえしっかりしてれば生涯ね、ない。
そういうしくみだから。
そう思うと、こういうのがまたあるのかっていやんなっちゃうっていう見方もあるけど、
こんなもんかっていうのもあって、つらくなくなんない?」そして笑って私を見た。
私は黙って目を丸くした。
この人は本当にかぜについてだけ言ってるんだろうか。何を言ってるんだろうか。
私は幸せになりたい。
長い間、川底をさらい続ける苦労よりも、
手にしたひと握りの砂金に心うばわれる。
そして、私の愛する人たちすべて今より幸せになるといいと思う。
克服と成長は個人の魂の記録であり、
希望や可能性のすべてだと私は思ってます。
私は日常を激しく、または静かに戦いながらよくなって行き続けるとしか思えない知人友人をたくさん持ち、本当はその人々すべてに、この私の処女・・・単行本を捧げたい気持ちです。
(あとがき)
「ムーンライト・シャドゥ」より
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「うまくいっちゃうもんなんだよ、きっと。
無理とかしなくても。
だめなもんは何してもだめになるし、うまくいくもんは何をやってもうまくいくよ」
私の人生が動き始めている、絶対に動いている。
今までよりずっと多くのことが、とびこんできて、ゆれが止まらない。
きっと私はわかりはじめている、この見方でもっとたくさんのものを見たい、と私は思った。
良いものも汚いものも、過去も未来も、何でもかんでもきちんとこの目で見てみたいと心の底から思ったのだ。
「幸せっていうのはな、死ぬまで走り続けることなんだぞ」
中略
「それに家族はどこにいてもひとつだけど、人は死ぬまでひとりだ、わかったか」