「家族輪舞曲(ロンド)」椎名 桜子より

能力が劣っていると悩むより、

その能力が自分にとって必要のない代物なのだと思うほうが

誰だって楽に感じるようだ。

”進歩がないのは許せても、ものすごい後退などうんざり”

たいていの恋愛は、”名前”から始まり、”名前”で終わる。

少なくともわたしが読んだ恋愛ものの筋書きでは、

主人公の男女が知っている限りの固有名詞を言い尽くして、

”愛”とか”運命”とか”人生”とかいった見えないものの”名前”にこだわり始めると破局が訪れると思って間違いなかった。

わたしは自分が成長しているとは信じられなかった。

成長することが、例えば何かひとつずつ自分についてわかっていくことだとすれば。

今も昔もわかった覚えなどないし、わかろうとも思わない。

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