「風に立つライオン」さだまさし より

みんなが笑ってたら、航一郎が一人だけ真顔になってるんだ。

「どうした?」って聞いたら、「先生、滝って凄いですね」ときた。

「何が?」って聞くと、「だってあんなに水が落ちてくるってことは、あの上にそれだけ沢山の水があるってことでしょ?」って言う。

僕はこいつ、何を思ってるんだろうと考えていたら、更に航一郎が言うんだよ。

「滝があるってことは、その上には滝を作るだけの水があるってことなんですよね。それが涸れないってことは、涸れないだけの理由があるんですよ」

思いがけない言葉でしょ? なんだか僕、分からないなりに感動したなあ。

「先生、滝の水って一瞬たりとも止まらないんですよ。落ち続けてるんですよ。それでも涸れないんですよ。生きてるんですよ。いやあ、滝って凄えなあ」

あいつ、泣きそうになって感動してるんだよ。

さっきはその水を飲んでる写真なんて撮らせたくせにさ。

「涸れちゃ駄目だ」ってあいつ、必死に自分と闘ってたんだろうなあ。

実際ビクトリアの滝はザンベジ川の水量が支えてるんだものね。

ナイアガラもそうだろ?

大きな水源がなければ、大きな滝なんて生まれないってこと。

人も同じだ、って航一郎は言ってたんだな。

ずっと凄い滝でいるには、自ら巨大な水源であれってこと。

確かに僕らはね、自分の心の水源が涸れることで、自分という滝を失うんだろうな。

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